埼玉県日高市 無所属無党派 松尾まよか議員
2019年に、山林のメガソーラー開発問題をきっかけに日高市議会議員に立候補し、4位当選。 現代の私たちの生活を見直し、本来の豊かさ、そして子ども達の未来を守るために活動する松尾まよか議員に、市民が行政を動かすということについて、CCLからインタビューしてみました。
CCL-J: 市議会議員に立候補された経緯について教えてください。
松尾議員:一番の契機になったのは、家の近くの山林にメガソーラーの開発予定があることを知ったことです。実際に山を歩いて、生命の息吹あふれる自然林や美しい沢のせせらぎを見たときに、ここにあるたくさんの命を守ることに比べたら、私一人の人生なんてちっぽけなことだということに気づき、できることは全部やろうと決めました。
その一環で議会の傍聴に行ったとき、議会には子育て世代の議員が一人もいないことを知り、このままでは、子ども達の将来を見据えた意思決定が議会でされるのは難しいのでは?と素朴な違和感、危機感を感じました。
自分一人が議員になって出来ることはよく分かりませんでしたが、自分のような世代、かつ女性、という立場の議員が一人でも出れば、次に続く人も現れてくれるんじゃないかと思い、出てみようと思いました。
CCL-J:4位当選を果たされましたね
松尾議員:選挙はまったくの素人で、当選するかも全然わからない中での出馬だったので、正直驚きました。都心から移住してきたばかりで地元の人脈はほぼ皆無だったので、性別や年齢で入った期待票が多かったのだと思います。
CCL-J:メガソーラーはどうなったんですか
日高市が大規模太陽光発電の開発を規制する条例を制定し、保護対象区域については、市の許可が降りないものになりました。当該の山林も保護対象となりました。
CCL-J:議員になってみて、議員の力と市民の力は違うものですか?
市民一人の力も小さくはないです。役所に何か言えば、市民の声としてちゃんと記録を取ってくれますし、それがリーズナブルな意見であれば、市も考えると思います。
議員だと違うかというと、所属政党があればまた別かもしれませんが、現状一人でやっている私の感覚としては、「声の大きい市民」っていう感じに受け止めています。1764票頂いたということは、1764人分の市民の声を代表している市民というように、執行部(市役所職員)は扱ってくださっているように感じます。
市民の方からご相談をいただいて、一緒に役所に行って話したりすることもあります。行政の事情について、市民の方より見えている部分もあるので、どこにどういうふうに持っていったら良いか、一緒に考えたりします。
CCL-J:話を聞いていて、行政と市民の間に立っている感じがしますね。
松尾議員:そうありたいと思って議員をやっています。議員って、これをやるって決まっている仕事はそれほど多くはありません。議会に出席することだけが定められている仕事で、年間数十日もありません。それ以外の300日以上をどう使うかは、その議員の個人裁量です。
私は、議員の役割を、硬い言葉でいうと、「住民自治」のリーダーだと思っています。当たり前ですが、主権は市民ですし、これからの時代は特に、市民が主体となってまちづくりを進めていくことがとても重要です。
今の日本人って、あんまりそういう意識を持っている方が多くないように感じますが、できるって知らないからっていうが大きいのではないかと。だから、一緒に自分達のまちを作ろうって、声をかけて、複数人の活動に拡げて、行政との間に立って橋渡ししていって、ある種、火に薪をくべてふーって息を吹きかけて燃やして、消えかけてたらまた吹いて、そうやってせっせとエンパワメントして回るのが議員の仕事かなと思ってやってます。
CCL-J:市民に是非こうしてほしいとかってありますか?
松生議員:議員としては、地元の所属している自治体の議員名簿とかを見て、是非コンタクトしてほしいです。どういう議員がいるのか興味をもって見てみて、何かしらピンと来た議員にコンタクトして欲しいなとすごく思います。
すごい嬉しいんですよね、私も活動報告などの紙媒体を作って、駅で配布したりポスティングしたり、結構地道な作業をするんですけど、それを見た方からちょっとした感想が来たり、応援のメッセージなんかをいただくと本当に嬉しい。むしろそういったお声を心の栄養に生きてる人種です(笑)。
CCL-J:気軽にコンタクトして良いものなんですね。
松尾議員:もちろんです!!
もう少し欲を言えば、関心あるテーマがあれば、役所に対してでも議員に対してでも、考えを訊いてみたりすることが、実はすごい意味があったりするので、ぜひトライしていただきたいです。
多分、ここにいる皆さんって、社会問題に色々興味を持っている方がほとんどだと思うんですが、その皆さんが発する用語を、まずその用語の意味から行政職員や議員が知らないケースがとても多いと思います。
私自身、市民の方々からお問合せやご相談をいただいて、知らない領域だと、慌てて勉強します。そうすると、その世界にアンテナが張られるので、だんだん詳しくなる。関心も深まってくる。そうやって皆さんに育てていただいている感覚です。
行政職員に対しても、たとえば必ず市役所には意見箱が置いてあって、WEB上でも市のHPにそういうページが必ずあります。そこに意見したり問合せしたりすると、必ず対応してくれます。対応するってことは、複数の職員がそのテーマに触れることになります。市民の関心として伝わることになりますし、それをきっかけに勉強してくれたりします。ほかにも、市民コメントや審議会など、行政への市民参加の機会を実は行政側は様々に用意しています。
これが全然知られてない…、もったいないです!自治体のHPを見てみてください。色んな入り口があるから、いろんな方面から市民がわーっと声を届けたら、いろいろ動くと思います。
CCL-J:自分たちが考えていることを伝えていくっていうことも、地域を変えていくきっかけにはなるんですね。
松尾議員:その通りです!
議員の立場を想像してみてください。信頼してくれて相談してくれたら、嬉しいし、動いてあげたくなるじゃないですか。他の議員から言われるよりも、市民から直接言われるほうが、すんなり動けることもあるんじゃないでしょうか。
むしろ、議員同士を戦わせても、あんまり動かない。想像したらわかりますよね。議員は仲間であると同時にライバルでもあるので、特に会派の違う議員から、これが大事だ!と言われても、必ずしも素直に共感しにくいというのはあると思います。
だからこそ、皆さんの立場から、動きを作っていって欲しいんです。
CCL-J:議員同志って仲悪いイメージがありますが。
松尾議員:…いろんな人間模様があります。議員も人ですから。いろいろあります。。。
とはいえ、国会と違って地方議会って、人数は少ないし、身近で、見えやすい存在ですよね。議員一人ひとりのスタンスや関心事項、議員同士の関係など、見てたらわかると思います。市民の皆さんには、色んな議員とたくさん話をして、もっと身近に、親しみを感じていただいて、議員一人ひとりをぜひ知っていただきたいです。
CCL-J:人間関係もあると思うけど、合理主義じゃないなって思うところありますか。
松尾議員:そうですね。。。合理性だけで決まっていることって、正直少ないんじゃないでしょうか。
べき論はさておき、政治ってほんと人だなってつくづく思います。好きか嫌いか、そこから動いて、ロジックは後付け、そういうことは多いと思います。
CCL-J:政治に限らず、企業でもどこでも、人間社会ってそういうものだと思います。それが、特に政治だと、企業と違って成果を数値で計りにくいので、そうなる傾向は強いかも…。
松尾議員:だから、変えたかったら、「誰」を動かす必要があるか。その「人」に動いてもらうにはどうしたらいいかって考えること。動かす相手は「人間」ですね。
CCL-J:そう考えると市民から、草の根じゃないですが、下から突き上げて動かしていくのが、一番効率的なのかもって思いますね。
松尾議員:本当にそう思います!国会を見てても、合理的に動いているとは言えないことも多くないですか。私は国会議員じゃないからあまり大きなことは言えないですけど、多分国会でも地方議会でも、ほとんど同じようなことが起きてるんじゃないかなって想像します。地方議会は国会の雛形だなって、最近強く思うようになってきました。
であれば、国会を動かすよりも地方議会を動かす方がずっとずっと簡単なので、地元の議会を市民の力で動かしていって、その結果として国会を動かすっていうことの方が、国に直接訴えるよりも、私は急がば回れな気がして、今、地方議員のキャリアを選択しているようなところがあります。県議会議員や国会議員になりたいかって聞かれたら、いや、日高市を変えることで世界を変えたいって、そっちの方が近道かなって、今は思いますね。
国会議員からも、”地方からの突き上げ”がほしいと言われることがあります。要するに同じ構造ですよね。私たち地方議員も市民からの突き上げが欲しいし、国会も地方議会からの突き上げが欲しいってことなので、私のミッションは、市民から突き上げていただいて、日高市から突き上げていくことだと思ってます。
CCL-J:逆に、地方議員には限界があるなって思ったことはありますか?
松尾議員:法律に則って行うのが地方行政なので、その枠はあります。財源も、国や県の補助に頼ることが多いので、彼らの方針に即したものだとお金が使いやすいです。
ただ、思っていたよりも地方自治の裁量ってすごく大きいということに気づきました。
地方は条例がつくれます。法律に対して、うちの市は別途こうやって行きますって、そういうこともできます。
地方独自の条例や仕組みづくりを通じて、こういう社会システムはどうですか?って世に問うていくっていうのが、地方議会から社会を変えていくって事だと思っています。
CCL-J:メガソーラーに対しての規制条例が出来たっていうのがすごく希望です。それが前例になると、他の行政にそれを伝えられるってすごい大事な事だと思う。
松尾議員:そうなんです!一つでも事例があるって全然違うんです。行政ってどうしても前例主義なので。だから何か一つでも、全国にはっと言わせる条例を作れば、それが日本の財産になるので、そういう財産を各議会で作っていっていけたら、日本全体が良くなるんじゃないかっていう。
CCL-J:実際、トランジションタウンとか環境問題に興味を持っている議員さんとかって多いと思いますか?
松尾議員:ドマイノリティだと思います。。。トランジションタウンなんて言葉はもちろん、地球温暖化に対するパリ協定とか、知らない方が多いんじゃないかな。
CCL-J:えええ!?
松尾議員:たぶん、皆さんが想像する以上に知らないと思いますよ。議員だから、行政職員だから、一通りの社会問題はチェックしてるだろうとか思わない方が良いです。地元のご近所の方々と同じと思っていいと思います。当たり前ですが、私も立候補するまで一般市民でしたし。
だからホント、市民が情報提供をしていくことって大事で、例えばWEBニュースの印刷を、「こんなのありました」って渡すだけでもいい。市民から渡されたら読みますよ。そういうのが市民からどんどん届くだけでも、行政職員も私達議員も、育てられていきます。
CCL-J:やはり伝えていくことですね。
松尾議員:はい。自然環境が、人が健康で快適に暮らすために必須のものだということにNoという人はいないと思うんですよね。守らないといけない、というのにNoという人もいない。
CCL-J:じゃあなぜ環境対策が進まないのか。
松尾議員:もちろん、既得権益の壁はあると思いますよ。でも、それよりも何よりも、一人ひとりの知識の欠如だと思います。ちゃんと理解すれば、基本的にはポジティブにならざるを得ないテーマだと思います。
CCL-J:現政権はツイッターをよく見てるって聞いたことがありますが、地方議員はSNSとか見たりするんですか?
松尾議員:議員によると思います。よくチェックされている方から、全然見ない方まで。年齢が高い方には電話やお手紙で直接がいいと思います。
批判とか、要求とかじゃなくて、ぜひ応援してあげてください。応援してくれる市民の声は、議員にとっては無視できない声です。
CCL-J:気候変動ってあまりにも事が大きすぎて、家族ですら、まさかそんな重大なこと国がやっていないわけないって言う。でもそれがやっていないんだって、伝えることが本当に難しいです。
松尾議員:私思うに、市民全員が同じように考える必要はなくて、3%とか1.5%の法則とか言われるように、関心を強くもって動く人を全体の3%に持っていくほうが、現実的だと思います。
あとは、さっきの話の繰り返しになっちゃうんですけど、本当に「人」なんです。
議員になっちゃうと、議員って人じゃないと思ってる人が少なくない印象で…、市民の方から、けっこうな言葉遣いのメッセージをいただいたり、一方的な要求をされたりとか、人扱いされてないように感じることが正直結構あります。でも、議員だって行政職員だって、公人といえ、民間企業のサラリーマンと同じ人間だから、人を動かすためにはどうしたらいいんだろうって働きかけるって、基本だと思うんですよね。そうじゃないと絶対動かせないと思います。
野党系の議員の国会でのやりとりや、市民の方のSNS上でのコメントとか見てると、言葉遣いだったり、態度だったり、そこを忘れちゃっているように思うシーン、少なくないように思います。見ていて気持ちが良いものでもありません。
もちろん、健全な批判は必要ですが、そこには相手への敬意があるべきではないでしょうか。人と人がお互い敬意を持った上で、相手を動かす作戦を考え、建設的な議論ができる関係性をつくっていくっていうのが大事だと思います。